外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「これは私に限っての話でもない。嘉門さんもお見合いをしろと言われなくなるのですから、双方にとって悪い話ではないですよね」
「た、確かに」
「それに、あなたと私は結婚に対しての意識も一致している。無理に縁談を推し進めてくる両親たちを一緒に鎮めませんか? ほら、さっきの、お見合い反対同盟を組んでいる仲ですから」
さっきの私の発言を借りて微笑を浮かべた大河内さんは、「どうでしょう?」と返答を待つ。
今後も次々とお見合い話を持ち込まれるのは、考えただけでも気が滅入る。
結婚が決まらない限り、今日のようなことが繰り返されるのだ。
それに終止符を打つためには、縁談を進め、結婚というゴールテープを切らなくてはならない。
「……それは、もちろん、鎮めたいです」
胸の内を口にした私を、大河内さんは穏やかな表情のままじっと見つめる。そして……。
「話はまとまりましたね」
そう言って、微笑を浮かべ直した。