外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「え、美鈴さん結婚!?」


 独り身でいいと言っていた私が突然結婚すると言い出したのだ。佑華さんのこの反応は正しい。


「うん。ずっと独身かなって思ってたんだけど、ついにね」

「えー、わー、おめでとうございます!」


 興奮気味な佑華さんの向こうで、七央は「おめでとう」と一言祝福を呟く。

 結婚の報告くらいそこまで緊張しないと思っていたけれど、言ってみると心臓が盛大に音を立てて動いていた。


「あの、相手の方はどんな方なんですか?」


 佑華さんは身を乗り出し、興味津々な様子で訊いてくる。


「あ、えっと、外務省に勤めている人で」

「え、外務省? もしかして、外交官とかですか?」

「うん、まぁそんな感じ」

「すごーい! エリートじゃないですか」


 盛り上がる佑華さんの声を聞きながら笑みを浮かべるものの、やっぱり本当のことはこの場では言い出しづらいと感じる。

 この先の縁談から解放されるため、利害の一致で結婚することを決めたなんて聞いたら、どう思うのだろう……?

 結局そのことは言い出せないまま、このあとの約束の時間が近づいた。

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