外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
これから夜勤に出かける佑華さんを七央が病院まで送り届けるということで、私も一緒に送ってもらうことになった。
今から霞ヶ関まで行くと言うと、近いしついでに送ってあげてほしいと佑華さんが七央に頼んだのだ。
ふたりの貴重な時間をこれ以上邪魔するのも申し訳ないと思い大丈夫だと言ったけれど、その点は心配ご無用だとはっきり言われてしまった。
「じゃあ美鈴さん、また! お土産ありがとうございました」
佑華さんの勤める大学病院に到着し、助手席に乗っていた佑華さんが先に車を降りて行く。
パワーウィンドウを開き、後部座席から「うん、お仕事前にごめんね」と顔を出した。
「忙しくなると思いますけど、近いうちにゆっくりご飯でも食べながら話しましょうね」
「そうだね、また連絡するね。仕事、頑張って」
佑華さんは「はーい!」とこちらに手を振りながら病院の敷地内へと入っていく。
その後ろ姿を見送っていると、運転席の七央が「出すぞ」と声をかけてきた。
「うん。お願いします」
佑華さんを降ろした車は、私を降ろす霞ヶ関へと向かって再び走り出す。
ここから十分しないうちに到着するだろう。