外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「おじさんとおばさん、結婚決まって喜んでるか?」
窓の外に流れる景色を見ていると、斜め前の運転席から七央が声をかけてくる。
フロントガラス越しに目が合った。
「ああ、うん、そうだね。三十路ギリギリ。滑り込みセーフの二十代で結婚できそうだしね」
「とは言っても、実際お前が家からいなくなったら寂しいんだろうな」
「そういうもんかね」
「そういうもんだろ」
再び沈黙が流れ、窓の外に視線を戻す。
今日はこれから、大河内さんと会う約束をしている。
私を連れて行きたいところがあると、数日前に連絡をもらったのだ。
今後のことについても話し合いたいと言われている。
お見合いの場で再会してから、まだ一カ月も経っていない。
お互いの両親には、それぞれ今回の縁談を進めていくと報告した。
あとは結婚に向けて準備を進めていくだけだけれど、私自身まだ頭と心が追い付いていない部分がある。
モルディブで出会ってからまだ二カ月にも満たない。再会したお見合いからは、たった数週間というスピードで結婚へと話が進んでいるからだ。