外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「ごめんなさい。私、軽率すぎて……」
それでもなんとか言葉を見つけて口にすると、見上げた大河内さんは「あっ、違うんです」と何かを否定する。
「すみません。少し大人げない言い方をしましたね」
そう言って横顔にほんのり弱ったような笑みを浮かべた。
「そんなことないです! 大河内さんの言う通りだと思いましたから。本当に、すみません。以後気をつけますので」
「大丈夫ですよ。今後、気をつけていただければ」
「はい。ごめんなさい……」
交友関係に口は出さないと言った大河内さんは、七央のことは一切咎めない。
ただ、傍から見て破綻している夫婦と思われないようにだけ気をつけてほしい。そういうことなのだろう。
これから結婚するということに対しての自分の意識の低さに反省しながらも、大河内さんのあっさりとした意見に改めてこの結婚の形を考える。
そんなとき、ふと頭にモルディブを去る間際に大使館で目撃してしまった光景が浮かんだ。