外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
ふたつずつが向かい合う四基のエレベーターのうちのひとつに乗り込み、大河内さんはカードキーを使ってエレベーターの階数を指定する。
音なく上昇していくエレベーターが到着したのは、二十三階のフロアだった。
これまで戸建ての実家を出たことがない私は、マンションに住むということが初めて。
エントランスに入る前から聳えるタワーマンションに圧倒され、中に入ってからはラグジュアリーな共有スペースをきょろきょろと見回してしまっている。
「ここですか?」
「はい」
カードキーで解錠した大河内さんは、ドアを開け「どうぞ」と中へと私を促す。
入った玄関が想像していたよりも広く、思わず「広い」と呟いた。
黒い大理石の床から靴を脱いで上がる玄関の高さは低く、白くピカピカの廊下に続く。
天井近くまであるシューズラックは多くの靴などを収納できるのが一目瞭然で、その扉の一部が鏡張りになっていた。