外交官と仮面夫婦を営みます～赤ちゃんを宿した熱情一夜～

　踵を返した大河内さんのあとに続きリビングに戻ると、ソファ席のローテーブルの上、折りたたまれた紙が一枚置かれてあった。その横にはペンも用意されている。


「私の部分は記入を済ませてあります。あとは、嘉門さんに書いていただいて、提出すれば手続きは完了です」

「え、もしかしてこれって」


　大河内さんの掛けるとなりに腰を下ろし、テーブルから紙を手に取る。

　開いた紙には〝婚姻届〟の文字があった。

　これから結婚するということが、目の前に現れた婚姻届によって裏付けられた。

　本物を見るのはもちろん初めて。

　大河内さんが言った通り、〝夫になる人〟の部分の記入はすでに済まされている。


「本当に、結婚するんですね……」

「これを見て実感湧きましたか」

「はい。でも……本当に、私がここに書いてもいいんですか」