外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「なるほど。わかりました。では、遠慮なく」

「はい。遠慮はいりません!」

「そう言うけれど、あなたも俺を〝大河内さん〟呼びするのは今日で終わりにしようか」


 私の要望に気持ちいいくらい切り替えて話し方を変えてきてくれた大河内さんに、不覚にもドキッとしてしまう。敬語じゃない彼は私にとっては新鮮だ。


「あ……そっか。私も、もう大河内ですもんね」


 これまで苗字で呼んできたのも、夫婦になれば変えていかなくてはならない。

 それだけ、私たちの関係が浅いことを物語っている。

 結婚を予定しているふたりが苗字で呼び合っているなんて、きっとあまりないことだろう。


「じゃあ、晶さんで」

「うん。それだけで一気に距離間縮まった」

「え、本当ですか?」

「美鈴」


 不意に名前を呼ばれ、鼓動が跳ね上がる。

 晶さんはそんな私に気づくはずもなく、「どう? そう思わない?」なんて訊いてみせた。

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