外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「そうですね。確かに、距離が縮まった感じがします」
平静を装いながらも、音を立て始めた心臓は一向に落ち着かない。
一体どうしてしまったのだろうかと自分を心配し始めたとき、となりから伸びてきた晶さんの手が私の手に触れた。
手持ち無沙汰から、膝の上で人差し指にはめているファッションリングをいじっていた手を取られる。
どうしたのかと顔を上げて、こっちをじっと見つめている晶さんと目があった。
口元には薄っすらと笑みを浮かべているけれど、瞳の奥には何か熱を灯している。
その端整な顔を目の前にして、すでに音を立てている鼓動が更に暴走を始めた。
「それなら……もっと距離、縮めようか」
じりっとソファに掛ける距離を詰められ、掴んだ手首を引かれる。
晶さんは私の目を覗き込むように顔を傾けた。
「婚約者は、どこまで許してもらえる?」
「えっ……ど、どこまでって」
私の指を握っていた手が腰へと回り、両手で抱き寄せられる。
晶さんの唇を耳元すぐのところで感じ、全神経がそこに集中した。