外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「あっ」


 髪の隙間から耳珠に口づけられ、思わず変な声を漏らしてしまう。それらしい声に自分自身で恥ずかしくなり、顔面が熱くなるのを感じた。

 それでも晶さんはお構いなしに耳朶に軽く歯を立てる。


「晶さっ、だめ」


 近づき触れられたことで、あのモルディブでの夜が鮮明に蘇る。

 探るようにじっくりと暴かれた甘い時間は、それまでに体験したことのない濃厚な密事だった。

 耳元から離れた晶さんに再び顔を覗かれる。

 目が合って、いつもと変わらない穏やかな笑みを見せられ胸がきゅっとなった。


「晶さん、っ──」


 言葉を遮るように唇が塞がれ、柔らかさを確かめるように口づけが深まる。息をつく間もなく彼の熱い舌が口内に侵入し、戸惑う舌が捕まった。

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