外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 キスだけでこんな風にとろけそうになるのは晶さんが初めて。

 あのモルディブでの夜もそうだった。

 全身の力が抜けるようで、体の芯がきゅんと震える。

 キスから解放されたときには脱力して、彼の胸に縋りつくような状態だった。


「っ、んっ……」


 でも心なしか、今日の口づけはあのときよりも優しさが増している気がする。

 行きずりの相手でしかなかったあのときの私にすら、晶さんは終始優しく丁寧だった。

 だけど今は、愛し合ってはいないとはいえ、もうすぐ結婚をする婚約者という関係に変化した。だからなのかもしれない。

 口づけを終えた晶さんは、そのまま腕の中に私を閉じ込める。


「今日のところは、ここまでで我慢しておく」


 そんな甘く悪戯な言葉を囁き、しばらく私を抱きしめていた。


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