外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「あの、晶さん。自分でやりますから」
「俺がやってみたいだけなんだけど、駄目か?」
「え、駄目ではないですけど、仕事から帰宅した人にやってもらうことではないかなって」
晶さんはフッと笑い、「そういうことなら問題なし」とドライヤーをオンにした。
少しずつ毛束を手にして、丁寧に乾かしていく。
人に自分の髪を乾かしてもらうのはヘアーサロンくらいで、男性にこうして乾かしてもらうのは初めて。
指先で髪を梳くようにされるとくすぐったい感じがして、その度に肩が小さく揺れる。
疲れて帰ってきているのに、好んで私の髪を乾かしてくれるなんて晶さんも物好きだ。
「うん、いいかな。完全に乾かしすぎも髪によくないっていうから、これでいいと思う」
乾かした髪を手櫛で整えた晶さんは、ドライヤーを片付ける。
「ありがとうございます。すみません、帰宅早々に」
「長い髪を乾かすのが新鮮で楽しいよ。毎日大変だな、乾かす時間がかかって」
「ですね。夏とかドライヤーが熱くって。でも、もう長年のことなので慣れましたけど」
そんな話をしながら揃ってリビングに出ていく。