外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「何か手伝えることがあれば」
どうやら手伝いをしようときてくれたらしい。流し台についた手に視線を奪われ、筋張った男らしい腕にどきりとする。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。食べましょう」
「じゃあ、片づけは俺がやるから」
食事を用意した席につき、晶さんが並んだ料理をまじまじと見つめる。
そういえば嫌いなものや食べられないものがないか訊かなかったけど、今日のメニューは大丈夫だろうか。
「もしかして、この間の両親たちとの食事会で和食が好きだって話したから、このメニューを?」
「あ、はい。嫌いなものありましたか?」
訊くと、晶さんは「いや」と微笑む。
「気にかけてくれて作ってくれたんだなって、嬉しくて」
「あ……そういうことか」
ホッとした思いをつい呟く。そういう風に言ってもらえると、作ってよかったなと思える。
「日本食を食べられない場所に行くこともあるから、国内にいるときは和食を好んで食べてる。けど、和洋中なんでも食べるから、もしまた作ってくれる機会があるなら、あまり気にしなくていい」
「迷惑じゃなければ、これからも作らせてください」