外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
〝もしまた作ってくれる機会があるなら〟そんな言い方に即言葉を返していた。
契約上の関係だから仕方のないことだけど、なんとなく、寂しい言い方だなと思いながら。
「ありがとう。楽しみにしてる」
晶さんは「いただきます」と箸を手に取り、蛤のお吸い物から口をつけた。
鯖のちらし寿司も煮物もお吸い物も、晶さんは「美味しい」を嬉しそうにつぶやきながら食べてくれた。
その様子に目にしながら、ちゃんと作れていたことに安堵する。
今日は料理動画を参考に調理に取り掛かったからだ。
今まで実家住まいな上に、家を空けることが多い人生を歩んできたため、料理の経験に乏しく、腕もないほうだ。同じ歳の女性平均から見れば、間違いなく平均値には達しない。
だからこそ、今後は料理の勉強もしていこうと改めて心に誓った。
晶さんが「美味しい」と今晩の夕食を食べてくれたことで、改めてそう思わされたのだ。