外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
明日、三月三十一日は私の誕生日。いよいよ三十歳になる。
少し前まで二十代も残すところあと少しか、なんて思っていたけれど、ここのところ人生の急展開で誕生日のこともすっ飛んでいた。
二十代もあと三時間もしないうちに終わってしまう。
『三十代にいらっしゃいませーね』
「はい。もうすぐ仲間入りしますよ」
『急に結婚もしたなんていうから驚いたわよ。明日はご主人とお祝い?』
「あー……」
そんな風に訊かれて、明日が誕生日だということは話題にも出していなかったと今更気付く。自分自身でもちょっと忘れていたくらいだ。
「仕事の都合もあるので、予定は特には」
『えー、新婚が何言ってるのよー』
他人が聞けば、新婚夫婦が誕生日を一緒に祝わないなんて有り得ないことなのだろう。
でもそれは、〝普通のカップルなら〟の話だ。