外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「お疲れ様。仕事は終わった?」
「はい。お疲れ様です」
「遅くまで大変だな。頭が下がるよ」
「いえ、そんなことは全然。フリーなので、仕事の時間が様々なだけです」
食事のときは帰宅後のスーツ姿だった晶さんも、今はリラックスしたTシャツにスウェットパンツの姿。
考えてみれば、スーツ以外のプライベートな格好を見たのはこれが初めてだ。
いつもきちんとセットされている髪も、今は入浴後で無造作にさらりと流れている。
目の前まで来た姿を見上げ、鼓動がトクトクと音を立て始めた。
「もう休む?」
「あ、はい。そろそろ……」
答えながら、今の今まで気にも留めてなかった重大なことに気がついた。
この住まいには寝室はひとつ。ベッドルームには新婚らしく、大きなベッドがひとつ用意されている。
となると状況的に、あの寝室で一緒に眠るということになるの……?
それはやはり愚問だったようで、晶さんは私の背に手を添え寝室へと入っていく。当たり前のようにベッドに上がる様子を前に、動揺を隠しベッドに入った。