外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
ダブルサイズ以上ある広いベッドの上、ふたりの間にはもうひとりくらいが眠れるほどの距離がある。
間接照明の淡い光の中、じっと天井の一点を見つめて気持ちを落ち着けていき、ひとり勝手に意識してしまったと冷静に考え直した。
寝室が同じだからって、私たちは愛し合って一緒になった夫婦とは違う。
そこの根本的な部分が違うのだから、変に構えたら相手に失礼なことだ。
モルディブでの夜のことが思い出されるから意識してしまったけど、現にこの距離感を保っている。
あの夜のことは、お互い〝羽目を外した〟だけなのだ。
「美鈴、明日の予定は何かある?」
わずかに訪れ始めた睡魔にぼんやりしていた中、となりから晶さんの声が聞こえた。
顔を向けると、私のほうに体を向けた晶さんと目が合う。
「明日は……特には」
「仕事は?」
「撮影の予定も入ってはないです」
一応自分の誕生日ということもあって、予定もないのにスケジュールは空けていた。
毎年、誕生日は仕事を入れていないけれど、これといって何かするわけでもない。
その年によって、友人とご飯を食べたり、両親に家で祝ってもらったり、毎年まちまちだ。
「そうか。じゃあ、明日は俺が時間もらおうかな」