外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「っ、あ、き……さん、それ、だめっ」

「だめ……? もうやめる?」


 耳元で聞こえた意地悪な声に、小さく首を横に振る。

 晶さんは「じゃあ、もっとね」と甘く囁き耳珠に口づけた。

 寄せては返す波のような快感に溺れながら、さっきの晶さんの言葉が頭の中を占領していく。

『夫婦になったことを実感するために、美鈴を抱きたい』

 あの言葉は、一体どういう意味なのだろう。

 私たち夫婦は、名ばかりの夫婦。この行為だって、ただ快楽を求めるだけのもののはず。


「美鈴……美鈴──」


 難しいことを考える思考は、何度も私の名前を呼ぶ晶さんの声で溶かされるように消えていく。


 今は、もういいや。

 全身で彼の熱い欲望を受け止めながら、気づけば何も考えていなかった。

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