外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 翌日。

 新婚初夜の夜更かしのせいで、ベッドを起き上がったのは午前十時半を回った頃だった。

 午前中はゆっくりと過ごし、お昼過ぎに晶さんの提案で外出することに。

 黒いボディが美しく磨かれた初めて乗る高級外国車に緊張しながら、ハンドルを握る晶さんに目を向ける。

 昨夜の艶っぽい姿が頭の中ではっきりと再生され、慌てて浮かんだ映像をかき消した。


「美鈴がいつも仕事道具を買い求めるお店はどこにある?」

 マンションを出てすぐ、晶さんが唐突に訊く。


「え……そうですね。いろいろ行きますけど、中野に付き合いの長いお店があります」

「中野か。じゃあ、道案内してもらえる?」

「え……それは、構わないですけど……?」


 疑問の視線を送る私へ、ハンドルを握る晶さんがちらりと顔を向ける。

 フロントガラスの先に目を向けた横顔にほんのり笑みが浮かんだ。


「カメラ。結局、未だに見つからないから。誕生日プレゼントにいいかなと思って。同じものを買い求められるかはわからないけど」

「え、カメラのためにわざわざ?」

「ずっと気になってたから」

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