外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「しばらく見ないと思ってたけど、また海外に出てたのか?」

「はい、日本を出たり入ったりしてます」

「そうか。忙しいことはいいことだな」


 そう言った玉置さんが、「おっ」と一緒に入ってきた晶さんに興味津々な目を向ける。


「なんだなんだ、久しぶりに顔見せたと思ったら男前と一緒なんて」

「あ、はい。実は、先日結婚しまして」

「えっ! 結婚!? 初めて彼氏連れてきたと思ったら、すっ飛ばして旦那か」


 カウンターの向こうで仰天する玉置さんに、となりに立った晶さんが丁寧に頭を下げた。


「初めまして、大河内と申します。妻が長くお世話になっていると伺っています」


 少しぶりに聞く晶さんの丁寧な話し方に、〝妻〟なんて言われたのも手伝ってきゅんとする。

 晶さんの挨拶に、玉置さんも「いえいえ!」と恐縮した様子を見せた。

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