外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「謝ることは全くないけど、気に入ったのもあったみたいだったのに。でも、急に連れていかれて悩む暇もなかったか。先に知らせておけば、選んでおけたかもな」
「いえ、嬉しかったです! 晶さんが私の歴史が詰まった場所に一緒に行ってくれて」
言ってみて、それは微妙な発言かと思ったけれど、晶さんは「それは俺も同じ」と言ってくれる。
「玉置さんが美鈴のことをいろいろ話してくれて、貴重な時間だったよ」
「えっ、いろいろって」
「高校生の頃の美鈴のこととか、俺の知らない頃の話をね」
そういえば仕事の電話がかかってきて、数分お店を出て通話に応じた時間があった。
その隙に、まさかそんな話をされているなんて思いもしない。
「やだ、なんか恥ずかしい話とか聞いたりしなかったですか?」
「いや、全然。昔から可愛かったって言ってたよ。それなのに、男を連れて行ったことはないって言ってたよな、玉置さん」
「そうですね。考えてみたら、一緒に行った男性は晶さんが初めてでした」
「それ聞いて、ちょっと優越感に浸った」
晶さんはそう言ってフッと笑い、自室へと引っ込んでいく。