外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 せっかくモルディブに来たのだから、旅行情報誌に載っているような水上ヴィラやシーフロントの極上リゾートホテルに一泊くらい泊まってみたい気持ちもあったけれど、ひとりでそんなところに泊まるのは持て余してしまうだろうし、何よりそんな寂しいことはないと思って即却下した。

 ああいうところは、カップルや夫婦で宿泊する場所だろうから。

 ホテルに戻り、大きな撮影機材を置いて再び街に繰り出す。

 一年中日本の夏季のような気温というモルディブだけど、滞在中の私の装いは露出度は少なめ。

 イスラム教の国ということがあり、リゾート地以外、女性は肌を出し過ぎないことがマナーだからだ。

 南国に仕事に行くときはキャミソールや短パンなんて格好もよくあることだけど、今回は肩や膝を出さない服装を用意してきた。

 今だって、オーバーサイズのTシャツにマドラスチェック柄のロングスカートという装いだ。

 地図を片手にのんびり歩き、時折足を止めてカメラを構える。

 マーレの街並みにはところどころでヤシの木が茂り、南国を実感させる。赤や黄、青などのはっきりした色の建物が多く独特の風景だ。

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