外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「これは……」


 晶さんはぽつりとそう言ったきり、まじまじとポスターを見つめる。


「このポスター、ここの下の部分は?」

「学校で掲示物から剥がしたときに、一部ポスターも切り取られてしまったようで。ちょうど、この下が無いんですよね」


 ほんの数センチだけど、ポスターの下部が切れた状態で譲り受けた。ポスターの写真自体には影響はなかったから、私としては問題ないけれど。


「なるほど……そういうことか」

「え?」


 ポスターを眺めながら何かに納得したような晶さんは、すぐに「いや、なんでもない」と微笑を浮かべる。


「でも、この撮影者も、今の美鈴がこの写真のおかげで存在しているって知ったら、嬉しいだろうな」


 そんなことは今まで考えもしなかった。

 でも晶さんの言う通り、この写真は私とカメラを結びつけ、人生を大きく動かしてくれたのだ。

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