外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
マタニティブルーとネモフィラブルーと
四月。
東京のソメイヨシノは入学シーズンを前に満開を迎え、今日は春風と共に桜の花びらがシャワーのように舞っていた。
急遽会いたいと連絡を入れると、佑華さんは快く仕事の休みを知らせてくれた。
落ち着いて話せる場所がいいと考え、何度か行ったことのある自由が丘のアップルパイが有名なカフェで待ち合わせることに。
スイーツ好きの佑華さんが、ここのアップルパイが大好きでお店を決めたら喜んでいた。
「ではでは、いただきまーす。……ん、やっぱり美味しい」
佑華さんの前には生クリームが添えられたアップルパイのプレートと、アイスティー。私の前には生絞りのオレンジジュースが置かれている。
「美鈴さん、ジュースなんて珍しいですね。コーヒー好きのイメージだから」
「あー、うん。今日は、なんとなく」
アップルパイをいただく佑華さんは、幸せそうにニコニコしてフォークを口に運ぶ。
どのタイミングで話を切り出そうかと、目の前のジュースにささる紙ストローをぐるぐるかき混ぜる。