外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「宿泊中のホテルに空き巣が入って、カメラを盗まれちゃってさ。それで、警察やら大使館やらお世話になって。そのときに知り合って意気投合した感じで」
「そうだったんですか。今、妊娠したかもって聞きながら、結婚した時期から考えて妊娠発覚するには時期的に早いなって思ってたから、納得いきました」
落ち着いてそう言った佑華さんだったけど、今度はにこりと微笑みを見せる。
「でも、なんかすごいです! それって、運命じゃないですか」
「えぇ? 運命って」
「だって、モルディブで出会った人が、日本に帰ったらお見合い相手で今の旦那様なんですよ? これを運命と言わないわけがないですよ」
運命──。確かに、日本での再会とお見合い相手が彼だったのは運命かもしれない。
だけど、結婚に発展したのは想い合ってのことではない。
親たちを鎮めるため。そして、お互いに結婚に縛られたくないという考えが一致していたからだ。
結婚はするけど、それはこれからもお互いに自由な人生を送るための選択。
私が妊娠したと知ったら、晶さんは間違いなく困るに違いない。
仮面夫婦に子どもはいらない、と……。