外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「違うの、佑華さん。結婚は、したことはしたんだけど、なんというか……」
「……?」
佑華さんは言葉を選んでいる私を落ち着いて待ってくれている。
ちゃんと、話そう。その気持ちがしっかり固まった。
「彼も私も、親からのお見合いから逃れたくて、結婚しちゃえば親も静かになるし安心するしって、そういう始まりで……。お互いに結婚願望はないってっ話してたから、形としては仮面夫婦みたいなものというか」
「仮面夫婦……人には夫婦に見えるようにしておいて、プライベートでは自由にしてる、みたいな感じですか?」
「まぁ、そういう感じかな。だから、そんな形の結婚で私が妊娠したなんてわかったら、想定外というか、そういうつもりじゃなかったというか……」
自分自身でも何を言っているのかわからなくなってくる。
ストローに口をつけ、オレンジジュースを飲んで気持ちを落ち着ける。
佑華さんはアップルパイを食べていたフォークを置き、じっと私を見つめた。
「じゃあ、堕胎しようと思ってたりするんですか?」
「えっ……」
助産師というその道のプロから出てきた衝撃的な言葉にハッとする。