外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「それは、したくないよ! そんな簡単に命を」


 咄嗟に出たような言葉に、佑華さんはにこりと微笑んだ。


「美鈴さんはそう言うと思ってました。もしかしたら妊娠しているかもって思っているから、今日はコーヒー飲まないようにしてるのかなって」

「あ……」


 佑華さんの鋭い観察力に黙り込む。

 カフェインは妊娠していればよくないと知っている。検査をし、妊娠しているかもと思ってから、好きなコーヒー紅茶は自然と控えていた。

 またストローに口をつけオレンジジュースをすすった私を、佑華さんはふふっと笑う。


「妊娠がわかった人の中にも、素直に喜べない事情のある方は少なくないです。美鈴さんにも、きっといろいろ事情と、いろんな感情があると思いますし。だから、美鈴さんとお腹の子にとって、何が一番幸せか、よく考えてみてください」


 何が一番幸せか……。


「ただ、赤ちゃんの成長は待ったなしですからね。私でよければ、いつでも相談してください」


 親身になって話してくれる佑華さんを前に、つい涙腺が緩んでしまう。


「佑華さん。ありがと」


 涙を浮かべた私を、佑華さんは優しい眼差しで見つめていた。

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