外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「古くなんてないわ。だって、お母さんは今すごく幸せよ。お父さんと一緒になって、あなたみたいな可愛い子に恵まれて」


 そういう言い方をされると、どうも強く返せなくなる。

 しかし、黙った私に母は今がチャンスとばかりに畳み掛けてくる。


「だから美鈴、お見合いはしなさい。次は会わずに断るなんてダメよ」


 ちょうど一カ月ほど前、お見合いの話を勝手に進められ、絶対に嫌だと断固拒否をした。

 そのタイミングで仕事が入り、急遽ニュージーランドに飛ぶことになった私は見事お見合いを断ることに成功。母はそのことを根に持っているのだろう。

 しかし、またお見合い話なんて、よくまぁ熱心に探してくるものだな……。


「あのときは仕事がブッキングして、仕方なかったんだよ。知ってるでしょ?」

「そうだけど、その前から行かないって散々騒いでたじゃない」

「だから天の神様がいいタイミングで仕事を入れてくれたのかもねー?」


 かわすように言い、荷物を持って背後に立つ母を避けるように自室から出ていく。

 母は「美鈴!」と引き留めるように力を込めて私の名を口にし、やっぱり私の後をついて階段をおりてきた。

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