外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「やだ。晶さん、私と手を繋いで歩きたいなんて思うんですか?」


 あまり重たくなく、軽い調子で訊いてみる。

 すると晶さんは私に顔を向け、不思議そうに小首を傾げた。


「なぜそんなことを訊く? それはもちろん。俺の妻は可愛いからね。手も繋いで歩きたくなるだろ」


 どこまでが冗談で、どこまでが本気なのだろう。晶さんの心が見えなくて、「またそんなこと言って」と軽く受け流す。

 そんな態度を取りながらも心臓は激しく音を立てていて、消えないもやもやと混ざり合って胸が苦しい。

 ネモフィラが咲き誇る丘を晶さんに手を引かれ歩きながら、自分でもよくわからない複雑な気持ちに頭を悩ませていた。

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