外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 ひとしきり撮影して満足すると、少し休憩しようと園内のカフェに入ることになった。海の見える見晴らしのいいカフェ。この時期はテラス席が気持ちいい。


「何か買ってこよう。美鈴は何にする。いつも通りコーヒーがいいか?」

「あ……コーヒーではなく、今日はジュースにします。オレンジか、アップルで」


 そう答えた私に晶さんは「珍しいな」と言う。

 何か悟られてしまったかとドキリとしたものの、晶さんは「わかった」と席をあとにした。

 家では、購入しておいたカフェインレスのコーヒーを飲んでいるけれど、外出先ではコーヒーは飲まないようにしている。

 晶さんは私がいつも通りコーヒーを飲んでいると思っているけれど、それは配慮しているものだということを知らないのだ。

 でも、普段何かと鋭い晶さんだ。油断をすればすぐに異変に気づくはず。気をつけないといけない。

 注文を終えた晶さんが戻ってきて、ドリンクと一緒にナンバースタンドが置かれる。


「昼もまだだから、美鈴が好きそうなものを適当に頼んできた」

「そうですか。ありがとうございます」

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