外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
土砂降りの雨の中で
知らされていたフランス大使公邸でのパーティーは、あっという間にその日を迎えた。
フランスの文化を広く周知するために年に一度開かれているパーティーで、フランスの企業も多く協賛し、招待客もかなりの数だと聞いている。
外交官である晶さんと結婚をすれば、妻として公の場に顔を出さなくてはいけないことはわかっていたけれど、それはぼんやりとした想像でしかなく、こんな緊張で息の詰まるものだとは思いもしなかった。
いや、それはこの着付けてもらった着物の帯のせいなのかもしれないけれど。
「大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です」
ドレスコードは、外交官の妻であれば着物が好ましいと晶さんに知らされ、今日はお見合いの日以来の着物を着ることになった。
事前に佑華さんに連絡をし、体調的に着物は着ても大丈夫かと確認は取っていた。
あまり締め付けすぎないようにすれば問題ないと言われたけれど、今日の着付けの具合は果たして問題ない程度なのだろうか……。
妊娠しているせいか、今まではあまり気にならなかったことにもすぐ心配してしまう。
精神的にも不安定になるのは当たり前だから、心にゆとりを持って、あまり無理をしすぎないようにと佑華さんからは言われている。