外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
大使公邸に着くなり、晶さんはあちこちで呼び止められ、そのたびに足を止めて応じていく。
慣れない私は横に立って微笑を浮かべ、晶さんに「妻の美鈴です」と紹介してもらうたびに挨拶に緊張した。
そこに居合わせる人たちはどの人も特別なオーラを放っているにも関わらず、晶さんは全く埋れていない。
むしろ、その容姿も相まって人目を引いているくらいだ。
そんな姿を見ていると、自分と晶さんが全く違う世界に生きているのだと思い知らされる。
フリーダムなカメラマンの私と、世界を股に掛ける晶さん。
やっぱり、住む世界がぜんぜん違うよ……。
「疲れたんじゃないか?」
なかなか途切れなかった挨拶の合間を見て、晶さんが私を気にかけてくれる。
「はい。少しだけ。でも、大丈夫です」
「そうか。もう挨拶が必要な相手にはだいたい会えたから、少し休むといい」