外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


 レストルームを出て、晶さんに告げた通り解放されている庭へと出ていってみる。

 庭園はよく手入れがされた芝生が一面広がり、奥には青葉をいっぱいに茂らせた立派な大木が森をつくっている。向こうにはプールも見え、広々とした景色は癒しの景色だ。

 庭園にはドレスをまとった美しい女性が多く出ていて、あちらこちらで記念撮影をしている。

 庭の片隅に設置されたベンチにひとり掛け、また「ふう」と息をついた。

 出かけるときには必ずと言っていいほどカメラを持ち歩いているけれど、今日は余裕がなく何も持ってこなかった。写真を撮れるのはスマートフォンくらい。

 それでも一枚くらい記念に残しておこうと、スマートフォンを取り出し庭園を一枚撮影した。

 そんなときだった。

 すぐそばに人の気配を感じ、顔を向ける。

 そこには、驚いたことにあのモルディブの大使館で会った女性の姿が。この間、マンションの下にいた、あの女性だ。

 黒いイブニングドレスをまとい、スリットからはしなやかな脚が覗いている。


「一体どうやって彼に取り入ったの?」

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