外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「えっ、晶さん!?」
「こんなに濡れたんだ。早く脱がないと風邪をひく」
「そ、それなら、自分でできますから」
そう言われた晶さんは、ハッと我に帰ったような表情を浮かべ、帯からパッと手を離す。その手で収納からタオルを取り出した。
「なんで着物なんか着たんだ。いや、俺が言ったのか……」
え……?
私が黙っているうち、晶さんはバスルームのドアノブに手をかける。
「とにかく、濡れた着物を脱いで、早く着替えるんだ」
そう言って、バスルームを出ていった。
妊娠していることを知られてしまった──。そのことで、私の頭の中はパニックに陥っていた。
晶さんだって私と同じ。今頃、私が身ごもっていた事実に頭の中はきっと真っ白だ。
着物を脱ぎ、濡れた髪をタオルで拭きながら覚悟を決める。
知られてしまったのなら、すべてを話すしかない。その上で、お腹のこの子は私がひとりで産み育てると言えばいい。
認知は、無理に希望するのはやめよう。彼の自由に生きていきたいという希望を潰すことはできない。