外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「でも……これでは約束が違います。晶さんは、自由に生きていくために私と夫婦になった。それなのに、私が妊娠なんてしてしまったら、もうこの結婚に意味はなくなる」
「確かに、初めはそうだった。お互いに事情をわかり合った上で一緒になれば、いろんなことが今まで通りに、むしろ今以上に快適になると思って結婚を誘った。でも、今はもう違う。美鈴と結婚して、日々幸せを感じている」
しみじみとした晶さんの言葉に、自然と瞬きが増える。どういう意味なのか、彼の心境が読み取れない。
「一緒の時間を過ごすうちに、気づけば好きで愛しい気持ちが溢れていた」
え……?
「ちょ、ちょっと待ってください。あの、言っている意味が。晶さんが、私を……?」
軽くパニックを起こしながら訊き返す私を見る晶さんは、どこか不思議そうに眉をひそめる。
だって、そんなこと知らない。好きなんて今まで言われたことない。
「俺の気持ちはとうに伝わってるとばかり思ってたけど、そうでもないみたいだな」
「とうにって……そんなこと、ちゃんと口に出して言ってもらわないとわからないというか」
ちょっと抗議するような口調で言った私に、晶さんは「ごめん」と頬をさらさらと撫でる。
「じゃあ、今改めて言う。美鈴、好きだよ」