外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「これ……。えっ、どうして……!?」


 手の中にある写真を見て、弾かれたように晶さんを見上げる。

 目が合った晶さんはにこりと微笑み、黙って私のとなりに座り直した。

 燦々と降り注ぐ陽の光の中、天にまで登っていきそうな立派な向日葵の花。

 雨粒でキラキラと光り輝くその姿の向こうには、くっきりと七色の虹が架かっている。

 そこに映るのは、私がカメラを手にするきっかけになった、あのコンクールのポスターと同じもの。

 それを、どうして晶さんが……。そう思ってふと、前にカメラを扱っていた時期があったと言っていたことを思い出した。


「もしかして……あのポスターの写真を撮ったのって、晶さん……?」

「高校のときに、父親に勧められて少しだけ撮っていた時期があったんだ。部員ではなかったけど、写真部の顧問にあの写真を応募してみないかって推されて。それで、運よく受賞して、あのコンクール宣伝のポスターに掲載された」


 私にとって、この写真との出会いは人生のターニングポイントになったと言っても過言ではない。

 どこで、どんな人が撮影した写真なのだろうと思ってきた。

 まさか、モルディブで出会い、お見合い相手として日本で再会し、結婚した晶さんが撮影したものだったなんて、こんな運命どこにあるだろうか。

< 229 / 254 >

この作品をシェア

pagetop