外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「え、今の笑うところだったか」
「いや、違うんです。晶さんが私の体調を心配しすぎているので、なんかおかしくって」
妻が妊娠していると知ったら、夫が体を気遣うのはもちろん当たり前のことだと思う。
だけど、晶さんの質問攻めについおかしくなってしまった。心配しすぎではないだろうか。
「当たり前だろう。美鈴自身も、お腹の子も、常に心配に決まってる。出産は命がけとも言うだろ」
「そうですけど、大丈夫ですよ。無理はいけないけど、妊娠は病気じゃないから、いつも通り過ごしていいって助産師の友達も言ってましたし」
まだクスクス笑っている私の頬を、晶さんが指先で突く。
「美鈴はフットワークが軽いから、本当にいつもの調子で動かないか心配になる」
「大丈夫ですよ。だんだんお腹が大きくなってきたら、今より実感も湧くと思いますから」
妊娠の事実を告げて離婚し、ひとりで産み育てる覚悟をしていた。
それが百八十度好転し、大好きな人がとなりで微笑んでくれている。
こんなに幸せな光景が待っているなんて、少し前の私は思いもしなかった。