外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「じゃあ、早速始めるか」

「はい。よろしくお願いします」


 用意された衣装の中から私が選んだのは、ホワイトのセパレートタイプのロングドレス。

 大きなお腹がきれいに出て、マタニティフォトらしい絵が撮れそうな衣装だ。


「美鈴、リラックス」

「はい。なんか、撮られ慣れてないから」


 つい緊張で顔が強張る。

 いつもは向こう側にいる立場だから、レンズを向けられるのが変な気分だ。

 おまけに、晶さんがカメラを手にしている姿にグッとくる。

 私の夢となる写真を撮った、ずっと憧れて、追いかけてきた存在。その人に自分を撮影してもらっているなんてやっぱり感慨深い。


「自然な感じでいいから。普通にしてていい」


 晶さんは落ち着いた調子で声かけをしながら、どんどんシャッターを切っていく。

 普段通りの会話で和ませながら撮影をすすめ、いつしか緊張はほぐれ自然体の自分に戻っていた。

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