外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
まさに嵐のような人だったなとその後ろ姿を呆然と見送っている視界で、対応を代わってくれた男性が振り返るのが目に映る。
ハッとして彼に視点を移し、すかさず頭を下げた。
「I'm sorry……that I cannot speak Chinese. That was a big help. Thank you very much.」
この男性なら英語は通じるだろうと、英会話で中国語が話せないこと、困っていたところ助けてもらってありがたかったという感謝を伝える。
私の目の前まできた男性はやはり長身で、少し顔を上向けないと視線が合わない。私の身長が一六〇センチあるかないかだから、この感じだと余裕で一八〇センチ以上はありそうだ。
「そうでしたか。それはタイミングが良かった」
「え……日本語」
なんのなまりもなく出てきた日本語に、思わず目を見開く。
「もしかして、日本の方ですか?」
当たり前のように中国語を話していたから、てっきり中国人だとばかり思っていた。
私の質問に、男性は「ええ」と短く答える。