外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「っ……晶、さん」
わずかに離れた唇の隙間から名前を呼ぶ。
晶さんは持っていたタブレット端末をソファの座面に置き、その手で私の頬を包み込んだ。微かに熱のこもった目にどきりとし、鼓動は更に加速する。
「キスまでなら、許される?」
内緒話でもするようなトーンで訊かれ、私の心臓はますます早鐘を打つ。
晶さんは私の妊娠を知ってから、自分の欲をひたすら抑え込んでいる。
妊娠中の女性の体について自ら学び、体を重ねることによって起こり得るリスクも理解しているからだ。
安定期に入れば、夫婦生活も無理のない程度に可能だと佑華さんからは聞いていた。
それは報告したけれど、万が一のことを考えて自制すると言ったのだ。
私とお腹の赤ちゃんのことを第一に考えてくれているのは嬉しいけれど、晶さんを我慢させてしまっていることは非常に心苦しい。
「許されます。むしろ、もっとしてほしい」
私の返事を聞いた晶さんは、すぐに深く唇を塞ぐ。
久しぶりに甘い口づけに翻弄され、頭の中は気づけば真っ白になっていた。