外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
赤ちゃんが外の世界に出てくる日は、私が仕事を休んでいることもあり計画分娩という方法は選択しなかった。
誕生日も、赤ちゃん自身に決めてもらいたい。出てきたいときに出てきてほしい。
私たち夫婦のそんな願いがあったからだ。
とはいえ、実際のところは計画分娩を選択すれば、晶さんの仕事の都合に合わせることもできたし、立ち合いも難しいことではなかった。
日時によっては、多忙な晶さんが病院に駆けつけることは難しく、私はひとり出産に挑まなくてはいけない可能性が出てくる。
あとは神のみぞ知るという感じだけど、この選択に後悔はない。
「今日もスケジュール的に忙しいが、必ず連絡はつくようにしておく」
「わかりました。何かあれば、連絡しますね」
晶さんは私のこめかみにそっと口づけ「いよいよだな」と優しい声音で呟いた。