外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
ん……?
なんとなく微かに、これまで感じなかった重苦しさを下腹部に感じる。
あまり気にせずお茶を飲んで誤魔化していたけれど、腰回りも怠い感じが気になって、そばに置いておいたスマートフォンを手に取った。
予定日が近づいて体調に気になる変化があれば、すぐに連絡をしてきてと佑華さんに言われている。些細なことでも構わないと言っていたのを思い出し、病院に問い合わせの電話をかける。
総合受付の人に産科にかかっていることと診察券コードを伝えると、すぐに産科に電話が繋げられた。
『もしもし、美鈴さん?』
「あ、佑華さん。良かった」
出てくれたのがちょうど佑華さんでホッと安堵する。
『どうしました? 今日予定日だけど、なんかありました?』
「何かと言うほど大きなことじゃないんだけど、ちょっと弱い生理痛みたいな感じがしていて」
『あら。もしかしたら弱い陣痛かもしれないですね』
「えっ、そうなの? やっぱり」
〝陣痛〟というフレーズに途端に緊張が高まる。いよいよかもしれない。そんな予感で頭がいっぱいになる。
『そのまま痛みが強く短い間隔になってお産に進む場合もあれば、治まっちゃう場合もあるんです。でも、一応来てもらって、赤ちゃんの心音とか聞いたほうがいいかな』
佑華さんの指示に「わかった」と即答する。
通話を終わらせ、受診の支度をしてからタクシーを呼んだ。