外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「結構、痛い……」
絞り出したような声に自分でも驚いてしまう。
佑華さんが私の横になる腰元に近づき、的確に丁寧に辛い部分をさすってくれる。
痛みの出る間隔が徐々に短くなり、私の口からは自然と自分でも驚くような唸り声が出てきていた。
分娩台に移動してきてから、どのくらいの時間が流れたのか確認する余裕すらない。
「痛い……も、だめ、かも」
「美鈴さん、呼吸しっかりしましょう。出てこようとしてる赤ちゃんに酸素がちゃんと届くように」
佑華さんの言葉を耳に、一生懸命呼吸を繰り返し酸素を取り込む。
苦しいのは母だけではなく、出てこようとしている赤ちゃんも同じように苦しいと、今回妊娠したことで初めて知った。
一旦引いていく痛みの中、部屋の中に目を凝らす。
私に繋がっている点滴の機械のモニター画面が目に入ってきて、そこに今の時刻が七時を回っているのがぼんやりと見えた。