外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「ごめん……美鈴はそう言ってくれてるのに、俺は全然だめだ」
「え……?」
「さっき、正直怖かった。美鈴も、お腹の子も大丈夫なのかって。美鈴が陣痛で苦しんでるのを目の前にしても、俺には何も手伝えなくて、苦しむ美鈴を見ていることしかできなくて、無力だなって」
「晶さん……」
晶さんらしくない言葉が出てきて、思わず返す言葉を失う。
そんなことを思いながらそばにいてくれたのかと思うと、やっぱりこの人を好きになって、この人の子どもを産めて本当に良かったと心から思えた。
「晶さん。そんなことないですよ」
握ってくれている手を、しっかりと強く握り返す。
「私、今ものすごく幸せです。出産は確かに壮絶だったけど、そんなことよりあなたの子を産めたことが最高に嬉しい」
「美鈴……」
晶さんの手先に力がこもり、握り合う手がまたきつく包まれる。