外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「お隣の七央くんだって結婚して、幸せそうだって聖子さんが言ってたわよ」
「なんでここで七央の話が出てくるの。私には関係ないでしょ」
「関係なくないでしょ? 置いていかれちゃったって思わないの? 七央くんも結婚したんだし、私だってって」
ここのところ急に結婚を急かされ始めたのは、私が三十歳目前だからという理由に加え、この家の隣に住んでいた幼なじみ、桐生七央が結婚したからというのが大きい。
親同士の仲が良く家族ぐるみの付き合いをしてきたというのもあるけれど、七央の結婚はうちの両親を激しく刺激してしまったようだ。
七央の母親である聖子ママのことは、私自身も幼い頃から第二の母のように慕っている存在。
だから、聖子ママが七央の結婚を喜び祝福していたのはすごくよく知っている。
七央の結婚はおめでたいこと。
だけど、その波に乗ろうみたいな最近の我が家の空気はいただけない。