外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「仕事として始めてからは、今年で八年目になります」

「八年。もうベテランですね」

「いえ、全くそんなことは。フリーになってからはまだ五年目ですし、まだまだです」


 大河内さんはナイフとフォークを手に取ったところで小首を傾げる。目が合うと私にも「食べてください」と促した。


「ということは、その前は下積み時代が三年?」

「はい。仕事としては、はじめ雇われカメラマンとして三年ほど。それから独立して、今のフリーでの仕事をしてるんです」


 ナイフで切ったかぼちゃの生ハム巻きをフォークに載せた大河内さんは、「へぇ」と感心したような声を漏らし、上品にそれを口へと運ぶ。

 私も「いただきます」とフォークとナイフで丁寧に一口目を口へと運んだ。

 かぼちゃの優しい甘味が生ハムの塩気と良く合い、中に一緒に包まれているクリームチーズが更にクリーミーな味をプラスしていて絶品だ。


「でも、独立してやっていくのは大変ではないですか? 撮っていればいいだけではないですし、全てのことを自分で処理しなくてはいけない」

「それは、確かにそうですね。スケジュール調整から、事務処理までいろいろ。でも、自分のやりたいようにはできるので、やっぱりフリーでの仕事はやりがいがあります」

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