外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
確かに、雇われている頃よりも自分でやらなくてはならない仕事は格段に増えた。
依頼の窓口から、先方とのやり取り。時にはスタジオの手配もするし、会計関連や税務処理まで。
カメラを手にシャッターを切っていればいいだけではないのが大変だけど、それももう五年やってきて大分慣れたことだ。
「今回この国にはどんな撮影で」
「今回は、旅行情報誌の中に載せる、ダイビング特集ページの撮影です」
「ということは、海に潜っての撮影を?」
「はい。今回は魚の撮影が主なので、基本潜って水中での撮影をしています。今日はマンタ・ポイントに行ってきたんですけど、マンタには会えずで。乾季は運が良くないと会えないみたいですけど、ここなら結構な確率で会えると聞いたので、明日また再チャレンジしようと思ってるんですけど──」
こんなに私の話ばかりしてしまっていいのだろうか。
話しながらハッとしたものの、大河内さんは穏やかな表情で私の話を聞いてくれている。
写真に興味があると言っていたから、退屈はしていないかな……?
「すごく、生き生きされてますね」
「え……?」