外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「高校に入学して間もない頃、校内に掲示されていた写真コンクールのポスターが目に留まって。そのコンクールで大賞を取っていた作品に魅了されて」
「受賞作……?」
「はい。なんか、とにかく惹きつけられたんですよね。それまで写真なんて全然興味なかった私が。雨に濡れてキラキラした向日葵の向こうに、虹が架かってる写真なんですけど。そのポスター、先生に無理言って掲示後にもらって。今でも大切に保管してるんですよ」
そんな話をしながら前菜を食べ終わったとき、「ビジソワーズスープになります」と、店主の男性が次の料理を運んできてくれた。
「それから、自分も写真を撮ってみたいって思って写真部に入部して……高三に上がる頃、そのきっかけになった写真が掲載されていた同じコンクールで、私も賞をもらうことができて。それで、写真を仕事にしようって固まって──」
質問されてついペラペラと話してしまっていたことにまたハッと我に返る。
自分の性質上、誰にでも臆することなく話せるほうだけど、今日出会ったばかりの人にさすがに自分のことを喋りすぎだ。
興味があって聞きたいと言ってもらったといえ、こんな私の歴史まで聞きたいはずがない。