外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
私も仕事上、フリーになってからは海外に出ることが多く、しばらく住み着くような生活も送ってきたため、語学は勉強してきたほうだ。
学生時代に英会話は取得したし、フリーになってからは仕事で滞在する地で必要だったフランス語と韓国語を勉強した。
英語に加え二か国語を扱えると言うと、よく「すごい!」と人から言われ、自分は外国語を扱えるほうなのかと思っていたけれど、大河内さんを前にして恐れ多いと思ってしまった。
これはとんでもない人と食事している。
「やっぱり、それくらい話せないと外交官っていう仕事には就けないんですね……恐れ参りました」
気を取り直してスープを口に運び、感心した思いを口にする。
「いえ、外交官には英語が扱えればなれます。そんな難しいことではない」
「え、そうなんですか?」
「ええ。私は好きで学んだだけですから」
さらりと出てきた『好きで学んだ』の言葉に、再び感服する。
外務省に勤めるなんて、きっといい大学を出てエリート街道を直走ってきたのだろう。
私とは生きてきた道が違いすぎる。