外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「そうなんですね。もしかして、他にも……?」

「あとは、フランスにいた時期があったので、フランス語は一応」

「なんだ、嘉門さんこそすごいじゃないですか」

 恐れ多すぎて「いやいや!」と顔の前で手をぶんぶんと振る。

 十か国語を習得している大河内さんからすれば、こんなの微々たるものだ。


「生活に困らない程度ですから、全然ですよ」

「英会話に加えて、韓国語にフランス語。お世辞ではなく、すごいと思います」

「いえ、すごいっていうのは、十か国語扱う大河内さんみたいな方を言うんですよ」

「私は仕事上、習得して当たり前の立場ですから、すごくもなんともないですよ。むしろ、まだ足りないと思っていますから」


 サラリと出てきた言葉に驚愕し、ついじっと彼の端整な顔を見つめてしまう。

 私にはすごいなんて言ってくれるのに、自分のことになると手厳しい。

 まさに、人に優しく、自分に厳しい。

 きっと、ストイックな人なんだろう。

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